◇古典型スーパーの製作◇


触ることもないと思っていたセパレート型・古典ラジオの箱が届きました。


 「修理して下さい。」と初期型のラジオが届きました。開けてびっくり玉手箱!なんと、箱の中には三菱のラジオシャーシが入っています。同梱されていたスピーカーの箱は次世代のタイプでした。オリジナルは、鉄の黒いラッパ型スピーカーで、そうでなければレシーバータイプだと推測します。
 このラジオをオリジナルにして下さいと頼まれれば、当然お断りするところです。なぜならUX201とかの真空管は手に入りません。あったとしても手が出せる代物ではありませんから・・・


○ノスタルジックを通り越したクラッシックラジオ?○

大きなツマミが左右に並ぶ初期型真空管ラジオ


 調べてみると当時のラジオは蓄電池で働かせるレフレックスのラジオが主流だったということが解りました。
 当時を狙ってストレート再生型にしようかな?・・などと考えていたところ、OMさんからのアドバイスがありました。
 「当時のラジオは感度も悪く、音も良くありません。知らない方だと操作も難しくて扱いにくいでしょう。」ということです。確かにそのとおりだと思います。
 依頼された方は、外観を主に、真空管ラジオなら・・ということでしたから、いつものように感度もそこそこで、使い易い5球スーパーを組み込むことにしました。しかし、個人的偏見ですが、最初から付いていたものを直して組み込む気にはなりません。
 ということで見た目にも少々こだわって「古典型スーパー」とでも言えば良いのかな??そんな感じで進めてみることにしました。


○届いたときの中見○

中身は戦後の5スパが入っていた。


◇同梱されていた外付用スピーカーBox◇

この箱だけでもなかなかのもの!ナナオラのラジオ用だとか?


 刻は昭和元年、もっと前かも知れませんが、その頃の箱だと思います。それにしても良く生き残っていたものだと感心します。
 こういう箱ですから、当時の雰囲気は極力残したいものです。調べてみると寸法はcmでも尺寸でもないようです。インチみたいな?そして磨き出せば底板は完璧に虫さんにやられてボロボロ・・・。パネルの額縁の下側も欠品、側板の角がピンホールでボロボロ、天板も数箇所ピンホールというとても嫌らしい状態です。ヒェ〜みたいな・・・
 直すと受けてしまった以上、仕方がありません。底板と額縁は新たに作り直しとし、側板と天板は接ぎ木処理でなんとかすることにしました。


◇虫食い状態の箱です◇

こういう状態の箱は購入しない方が無難です。


○中身の検討○


 中に入れるラジオは、いつものごとく使いやすい5球スーパーとしました。この箱は天板が開くので簡単に中を覗くことが出来ます。
 当時は、故障も多く簡単にチェック出来る構造にしたのだと思いますが・・・あくまで想像です。ということは、蓋を開けたときにIFTが見えるのもなんとなく気に入りません。要は見せなければ良いということ?
では、どうすれば・・・無い頭で、夜な夜な考えることにします。


◇チューナー部です◇


こんなのを入れることにしました。


ペーパーコンデンサー

  さてさて、中身は5スパと決定したのですが、5球スーパー候では全く面白くありません。どう料理しようかと悩んだあげく、チューナー部は、MT管でコンパクトにして全体をカバーで覆って見えないようにすることにしました。
 真空管をアピールするため低周波増幅部にST管を使い、この球だけ見えるようにレイアウトすることにします。球の配置の都合上、検波はDiとします。
 更にCRも平ラグ式として意図的に見えるように配置してみました。また、本体だけで使えるように小型SPを内蔵し、切り換えスイッチを付けることにしました。 
 言い忘れましたが、使用した抵抗はL型、コンデンサーはペーパーコンデンサーです。えっ?今時ペーパーを・・・な〜んて驚いてはいけません。フイルムコンデンサーに紙を巻いて太くしたものに、ラベルを作って貼ったペーパーコンデンサー?なのです。レトロ風を強調したかっただけということで・・・


◇古典スピーカー◇


付いていた格子パネルは裏板として・・・


 本体とセット物ではないのですが、この箱も時代を感じさせるなかなかのものです。これも単体として使えるように、ラジオ本体とは色調を合わせず、オリジナルを残して再仕上げとします。
 正面の格子は割れや剥がれがあり、作り直しとなりました。付いていた正面パネルは裏板として再利用します。裏板はまじまじ見ることもないので、割れを接着して塗装すれば十分です。
 こうして、眺めてみるとレトロ〜な箱です。娘がすかさず「ちょうだい〜!」と言います。「これは、とうさんのじゃないからダメ〜」と言えば「じゃぁ、作って〜!」と・・・ひぇ〜です。作ろうかな〜〜??

◇できあがった古典スーパー◇


SPを乗せて・・・。うん!いいみたいな・・・?


 色調と光沢はそれぞれで合わせてありませんが、本体の上に、SPBoxを乗せて眺めてみればなんとなく良い雰囲気のような?時代的にマッチしないと思っていたのになんか良い感じがしました。
 本体内部のスペースを目一杯かぶせものでごまかしたラジオですが、最初よりは良いということで・・・。おしまい。

◇ツマミはオリジナル◇


大きなツマミが良い感じです。

右は文字入れ前です。


 こういうラジオは、大きくて目盛が刻んである独特のツマミがとても良い雰囲気です。付いていたツマミは、オリジナルなのか取り付け穴が国産品より大きなものでした。あまりにもガタがあるのでアルミ箔を巻いて調整します。小さなツマミは、忙しい中、和歌山のOMさんにお願いしました。
 また、文字も剥がれかかっていましたので全て取り除き新たに文字入れとなります。これは、細かな作業で大変疲れましたが、見栄えは大変良くなります。

◇作り終えて◇



◇本体内部◇

3本だけ見えるように配置、他はカバーで・・・


 正直なところ、この手のラジオは触ることも無いだろうと思っていました。このラジオは小型の部類だと思いますが、もっと大きな箱のラジオも店頭や骨董市で見かけたことがあります。しかし、値札を見れば手が出せるものではありませんでした。今でも・・・・。
 今回、勉強になったのはこの箱の作りです。蝶番で蓋が開くようになってはいるものの意外と単純な作りでした。これも、こういう箱をバラバラにする機会があったからこそ判ったことですが・・・。いつか似たような箱を作ってみたいと衝動に駆られたラジオでした。


<2007.05.05>


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