標準型5球スーパーの製作

5球スーパーを作ろう!

◇古き良き時代を忍びつつ、こたつで組み立てる昔ながらのラジオ◇



 かなり以前のことです。トリオのテクニカルデーターというのがラジオ雑誌にシリーズで掲載されていました。久しぶりにページを捲ってみると実体配線図という懐かしい画が目に留まりました。世の中には、上手く描ける人がいるものだと思いつつ眺めてみれば、今では製造されていない旧型の部品を使った画です。妙に懐かしいやら面白そうで、こんなふうにレトロに作ってみたいな〜などと想像してしまいます。
 丁度、正月休みということもあり、お遊び気分で当時のラジオ少年にチャレンジしてみることにしました。冬は、おこたで球ラジオを作るのが一番!


当時の実体配線図

シャーシを広げたようで見事な画


 どうせ作るなら、実体配線図みたいな昭和20年後半から30年くらい(だと思いますが…)の雰囲気を味わってみたいと思います。この頃は、テレビが普及する前で、家庭での娯楽といえばラジオとか電蓄だったのかもしれません。
 テレビのない時代なんて信じられないかもしれませんが、当時はそれで十分だったのです。一家団欒のひとときは「鐘の鳴る丘」とか「君の名は」などラジオドラマで楽しんでいたのではないでしょうか。みどりの屋根の赤い丘〜♪♪とかいって・・・?
 ※鐘の鳴る丘は、もう少し以前でスパーが普及仕始める頃のラジオドラマです。
 一般家庭では、まだ並4等マグネチックSPラジオで聞いていた。とスーパーOMさんからご指摘をいただきました。<2007.03.03補足>

 ラジオだとテレビみたいに連日連夜の過激な映像がありませんし、これに慣れて脳神経が麻痺するなんてことは無かったわけです。ある意味でテレビには怖いものが潜んでいたりします。放送スタッフは、もう麻痺しているのかもしれません???
 そんなことはさておいて、まだ自然がいっぱいあった長閑な時代・・・そんな頃に情報を得る唯一のラジオ、古き良き時代の再現とでも・・・。


知らぬ間に貯まってしまった昭和のポンコツ部品

人々は、これをゴミと言います。ゴミでも使えるのです。たぶん・・・


 今では入手は難しいので、新たにチャレンジならパーツ屋さんで新品を求めます。もし、旧型が手に入ったとしても良否を調べる測定器が必要です。当時の部品は、相当の年数が経っているため、たとえ未使用品でも性能が落ちているとか、不良品もありますので、事前に定数など良否を調べる必要があります。特にコンデンサー類は不良の可能性が非常に高く、抵抗は表示値と大きく変わっていることがあります。
 しかし、ポンコツ部品も調べてみると使えるものが結構混ざっています。ただし、寿命は判りません。ぺーパー若しくはオイル・コンデンサーだけは、今のものをお勧めします。ただ、見た目にレトロの雰囲気が失せてしまうのが残念ではありますが・・


○5球スーパー部品一覧表○

漏れはないと思いますが、拾い出してみました。


HSシャーシの鉄製シャーシに真空管ソケットを付けました。

残念ながらこのシャーシは、もう市場にありません


 いろいろ部品を引っ張り出して眺めてみます。いいものないかな〜?と、ごそごそかき回しているとナショナルのラジオパーツなんていうのが出てきました。アンテナコイル、バリコン、IFTにブロック型電解コンデンサーなどです。
 こういうのもありかな?と古い雑誌で見かける簡単な標準型といわれる5球スーパーとしました。この標準型という意味が良く分かりませんが、今回は「5球スーパーを作ろう」みたいなケースのないラジオを目指します。真空管の保護ケースがないラジオで別名「ストリップ型」とOMさんがいっておりました。
 使用するスピーカーも当然ですが昔のものです。今のようにキンキンと耳につくこともなく、どこか優しい音色です。飾らない、何も足せない庶民の音?


昔ながらのパーマネント・スピーカー

ロクハンと呼ばれる6.5インチの出力トランス付きスピーカー


 あとから気がつきましたが、シャシ高が低く、昔の大きなツマミだと操作しづらいようです。今さらシャシを高くできません。とりあず、てきとうなものを仮付けして組み立てることにしました。
 たかがツマミといえども、昭和の感覚が欲しいので後から交換することにします。同調方法は、周波数表示もなくバリコンに直接ツマミを付けるという非常に操作しにくい仕様です。なんとか使えればよいということで、ラジオ少年はそれでも良いのです?


組み立てましょう

真空管ソケットなど軽いものから取り付けます。


 シャーシに取り付ける部品は、真空管ソケット、外部端子、ヒューズホルダー、ボリュームなどの軽いものから取り付け、IFT、バリコン、ANTコイル、OSCそして一番重たい電源トランスを最後にします。シールドケースのベースを忘れないように、真空管ソケットと一緒に固定します。
 なぜかっていうと部品の取付は、シャーシを何度もひっくり返したりしてネジ止めをします。先に重たいものや大きなものを付けると取り回しに大変苦労します。勿論、このときにキズを付けてしまう可能性がいっぱいあります。
 また、配線はシャーシを裏返して行うため、自信がない方は必ずダンポールなどでトランスやIFTなどをくるんで保護した方が良いと思います。


配線しましょう。

アース母線、ヒーターの配線と進めます。


 配線はアース母線、ヒータと順序よく手際よく進めます。配線手法は色々あれど、ヒーターは、どうも多少なり縒った方がハムの対策で有利ではないかと思います。アンプでは基本中の基本かも?
 しかし、今回使った線は外経が2.3φという太めの線です。どうせなら太い方が格好良いだろうと、昔アンプを作ったときの残りものを使いました。ただ、ソケットとシャーシ後部の隙間が少なく綺麗に収まりません。仕方なく大きく縒っただけとなりました。使うなら太くても外経は1.8φくらいが扱い易いと思います。しみじみ・・・。
 この配線が終われば、続いてB電源の回路でトランスから整流管、平滑コンデンサーそしてIFTくらいまで終わらせておきます。この配線の順番も人により様々ですが、間違いのない様に配線図があればコピーして、配線が終わったところを色鉛筆で塗りつぶしていけば間違いも非常に少なくなると思います。初めての方は実体配線図のとおりに真似ていくのが一番です。そのうちに回路も理屈も理解されることでしょう。
 一番大事なのは好奇心と興味そして根気だと私は思っています。


音声増幅回路の配線

6ZP1-6ZDH3Aのソケットに部品を付けます。


 続いて音声増幅回路の配線です。電力増幅管(6ZP1)−電圧増幅管(6ZDH3A)の配線、AVC(オートマチック・ボリューム・コントロール)を済ませます。この6ZDH3Aのあたりが、ちょっとややこしく、部品も集中します。
 電圧増幅管のプレートへの給電は電力増幅管の増幅時に電圧変動を抑えるためデッカプリングコンデンサーを付けます。これは、大きな音を出したときなど、電力増幅管には沢山の電流が流れます。この急激な電流変化で電源ラインの電圧降下が起きやすくなります。
 この電圧降下は、前段の増幅管に大きく影響し動作が不安定となります。最悪時は、発振を起こすことさえあります。その防止策のために、抵抗とコンデンサーを追加します。しかし、大きな音で聞くこともないとか、電源トランスにもの凄く余裕があるとかでしたらこの回路は省略しても大丈夫でしょう。
 実際は、メーカー製のラジオには付いていないものもあります。上記の実体配線図にも付いていないことが判りますが、省くことによりコストダウンを図れます。
 でも、私は気に入らないので付けています。


配線終了

なんだかんだと部品を付けていたら知らない間に終わりました。


 部品は出来るだけ縦横方向に取り付け、文字の向きも揃えると見栄えがいいみたいです。ただ、電解コンデンサーは、極性がありますので無理矢理揃えることはできない場合もあります。裏は、あまり見ないところですが、それらしく組み立てるのも自作ならではの楽しみのひとつです。
 さて、配線が全て部終わったからといって、すぐに電源を入れるのは絶対にやめましょう。その前に配線くずや使い終わった工具をなどを片付けます。
 そして、ひと口サイズのヨウカンと渋めのお茶を用意しましょう。ここでお茶などしてひと息いれます。コーヒーでも良いですね・・・。ヨーカンとコーヒー??


◇完  成◇

ツマミもレトロにしました。


 落ち着いたところで、配線ミスが無いか確認します。配線図や実体配線図があれば、組み立てたものと良〜く見比べながら回路図を塗りつぶしていくとミスなどがないか判ります。これは大切なことなので入念に確認をしましょう。これを怠ると悲惨な目に遭います。
 スーパーでも、間違えずに配線さえすれば、必ず作動するはずです。入念に確認を終えたら電源スイッチをオンします。スイッチ入れたとたんヒューズが飛ぶとか煙が出る。焦げ臭い、ボッボボとか変な音がする。などの場合は、ただちにスイッチを切ります。配線が間違えている証拠です。再度確認しましょう。
 スイッチを入れて真空管がオレンジ色に灯り、しばらくしてスピーカーから微かにブゥ〜ンと聞こえたら、バリコンを回して受信してみます。微かにでも放送が聞こえればばしめたものです。残るは調整のみということになりますから・・・
 お正月の暇つぶしにと手がけましたが、あまり暇もなく思ったより手間がかかりました。部品探しに・・・・・。

<2007.02.28>


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