ビクター MCT−100(FMステレオチューナー)


FMのステレオ放送が聞きたくて・・・


 ラジオの楽しみ方は人それぞれですが、私は子供の頃から好んで音楽番組を選んでは聞いていました。とても良い音がしたラジオが壊れてしまい寂しくて仕方がありません。他のラジオで音楽を聴くことができても物足りない日々が続きます。そんな時、また手に入ったのはFM/AM付き6CA7ppのモノラルアンプです。これは、相当のパワーがあり、てきとうに自作したスピーカーBoxでがんがん鳴らしていました。この時使ったSPユニットは、壊れたラジオのロクハンです。調子にのって大音量でボンボン鳴らしていましたら・・・・・あとは、ご想像にお任せいたします。


懐かしいステレオチューナー

当時ナショナルのワールド・ボーイより安価だったと思います。


 さて、アンプを見るFMというところがあります。ここにするとシャーというノイズだけで何も聞こえません。AMは別にワイヤーを張ってありましたが、FMには全然役立たずでした。
 調べてみると、本には簡易アンテナというのが載っていて、試しにT型アンテナを作り、壁に取り付けたらノイズの中から辛うじて放送が聞こえました。
 これでは役に立たないと、夏休みにアルバイトをしたのでいそいそとバスに乗り、5エレとパイプなど一式購入しました。
 早速、屋根の上で組み立て、それからパイプに固定して受信してみました。聞いてみるとノイズだらけで何も聞こえません。再び屋根に上がり、クルクル回して一番強い方向を探ります。ひとりでやると何度も屋根の上に行ったり来たりしなければならず、孤独の作業はとても大変です。
 このFMというのは、弱電界地域において指向性が強い八木アンテナを必要とするということを学びました。


中の基板

AMのバーアンテナも内蔵されています。


 アンテナを見上げれば、テレビアンテナより大きくてなかなか格好良く見えます。アンテナ設置も終わり聞き入ることに・・・。ノイズは無くなりとてもクリアに聞こえます。AMではフェージングとノイズの中で楽しんでいた音楽番組だったのでFMの登場には感激したものです。
 この頃からラジオといえばFM!FMオンリーのになっていったのではないかと思います。そして、どっぷりとFMのクリアー音につかり、数ヶ月が経ちました。放送で良く出てくる「この放送はステレオでお送りしています。」というアナウンスがとても気になります。使っていたアンプはモノラルだし・・・。どーしてもこのステレオ放送というものが聞きたくなりました。
 そして手に入れたのがビクターの一番安い小さなチューナー!冬休みのバイトでやっと購入しました。そのとき同じようなデザインのアンプも一緒に購入したと思います。これらはとっくの昔に処分したのですが、数年前に同じチューナーを見つけ、懐かしさのあまりに「ちょうだい〜!」と貰ってきました。


グリーンに浮かび上がる丸形のダイアル窓がグッド

ケースはプラに木目プリント、痛みもあります。


 当時は、高級品など手が届くものではありません。こんなオモチャチックなものでも十分に満足でした。というのも、憧れのステレオ放送というのを聞くことができたからです。
 購入時は、型遅れの展示品だったのかとっても安かった記憶があります。お店の人に「これ、いい音するの?」と聞いたら返事がなかった事を思い出します。聞く方も野暮である・・・。


さすがにビギナー用!

出力は赤白のシールド線にRCAピンプラグ付き
コードを固定するプラ板を外したところ


 接続も容易にと至れり尽くせりです。まさに入門者向け、接続ロスが少なく理想でもあります。ということで満足しておきます。
 しかし、これでは寂しいというか、あまりにもなんでございます。一丁前のステレオチューナー並に出力端子を付けることにしました。簡単な作業でそれらしいものに見えますし・・・あくまで気分的なものです。


簡単作業

接続の取り回しも容易になります。


 サイズは小型、ハーフサイズと言うべきでしょうか、奥行きが長くてなかなかのスタイルではないかと思います。
 出力端子は、リード線が引き出されていたところが大きな穴になっていました。この穴を利用してRCA端子を取り付けるだけです。R端子は赤、L端子は白です。こんな昔から統一されていたんですね。
 端子も付け終わり、早速聞いてみました。アンプに接続するのも面倒なので、セラミックイヤフォンで聞いたりして・・・?うん、なかなか新鮮な懐かしい音がする。と自己満足でした。


ビクター PAP−30−R(PAアンプ)


懐かしさのついでにFMモノラルに・・・

VUメーターが付いて楽しそうです。


 ステレオ放送を知る前は、同じくビクターの真空管のアンプでした。
 数年前に、たまたま球のFM付きが手に入りましたので、懐かしい時代のFMをこれで楽しんでみようとちょっと思いつき、手を入れてみることにしました。ただし、ハイパワーの6CA7ppではなく6BQ5ppです。
 これは、真空管末期の製品かTONE/MIX/MGアンプはゲルマトランジスター構成のハイブリッド品です。オール真空管じゃなかったのでちょっと残念でした。
 ちょっと掃除をして試験通電をしたところ、ピュ〜、ギュウー、ギュァ〜、ポッポッと変な音がしました。こういう異常音がしたらすぐに電源を切りましょう。


放送設備用の真空管アンプ

ツマミが沢山だけど殆ど使わない?


 これは、昭和37年の製品です。当時は最新の技術と云ったのでしょうか、Trの基板もソケット式になっています。
 整備は、バリコンのゴムの取替、ダイアル糸の張替、これがなんとも狭くて面倒な作業でした。その他カップリング・コンデンサーの交換、焦げた抵抗の交換とか定数の変更、絞りきれなかったボリュームの交換、それとラジオ部の再調整、基板の再半田、ケースの塗装もありました。考えてみれば結構な仕事量です。
 シャーシは全体にパラフィンを塗ってありホコリで真っ黒です。擦ってもなかなか落ちないので溶剤をしみ込ませたウェスでゴシゴシしたところ、なんとか取れましたが、パラフィンは嫌らしいもので完全には除去できません。絶対どこかに残っていてピカピカに再塗装するのも気が引けます。眺めていると全部ばらしてオール真空管にしたいような気分に駆られますが、鉄だし硬いし、面倒くさいし・・・・。


日立の5U4GB

日立のこの整流管は何故か
TV管というイメージが強い?

 配線図はありませんが、シャシ裏や基板を眺めていればそれなりに解ってきます。たぶん・・・
 焦げた抵抗は、無負荷で作動させてしまったのではないかとOMさんに教えていただきました。出力端子は平ラグのネジ式だし、全部OMさんの推察どうりの仕様となっています。見せた訳でもないのに恐ろしいOMさんだ・・・。
この抵抗は、出力トランスの一次側に取り付けられているもので、高域の発振対策ではなかろうかということです。ラジオだとコンデンサーのみですが、抵抗と直列に付いていました。整流管は異様に大きな5U4GB、AFには12AX7と6BQ5が2本です。チューナー部はFMも付いています。

 FMは6AQ8-6AQ8-6BA6-6BA6-6BA6-6AL6で作動、BC/CWは6BE6-6BA6-0A70というダイオードによる包絡線検波です。FMは6AL6によるレシオ検波となります。
 マイクアンプは2基搭載、マグネチック・ピックアップ用アンプ、ミキサーアンプそしてトーンアンプはいずれもトランジスターで構成されています。これらの電源は珍しい事にセレン整流器で普通のリップルフィルターでした。
Trをマイク・アンプとかマグチックアンプなど高増幅を要するところに採用すればハム対策には良いかと思います。ハムはVRを絞った状態で微かに出ている感じです。殆ど気になるレベルではありません。さすがにプッシュプルかな?と感じました。しかし、大型スピーカーシステムに接続すると多分気になるかも知れません。


トーンコントールアンプ基板

基板をソケットにグサッと差し込む様になっています。


 この差し込み型の基板は、パソコンの増設ボードを差し込むような構造です。こんな時代からあったということにもちょっと驚きです。
 ここも接触不良を起こしていました。古いものなので仕方がありません。基板は全て再ハンダ処理です。接触不良(半田付け不良)が無いとは言い切れないので念のための処理です。
 トランジスターは時代相応で日立のゲルマニュームトランジスタが使われていました。


CDも接続できます。

娘のCDを借りてヒアリング


 簡単な整備も終わり、早速聞いてみました。BCにはHiFiというところがあり、このポジションだと音楽放送は普通のラジオよりとても良い音がします。我が家にある超高級ラジオと比べるとこちらの方がすご〜〜〜く良い音がします。ポータブルCDも接続できるし、FMも聞くことができます。
 そして、何よりもミキシング装置が付いていてラジオ放送とCDを同時に聞くことが出来るという超スグレモノであります。ただし、同時に聞くとやかましいだけです。
 OMさんのお話では、超高級ラジオと音を比較するのはあまりにも可愛そうだということでした。なぜならば、超高級ラジオというのは「JRCのNRD-1EL」だったからです。
 このアンプはやっぱり放送設備の機器です。ラジオも十分聞くことが出来ますが、選局ツマミがラジオの音量調節の外側にあり選局中に音量を絞ってしまうことや回しにくい作りになっています。ダイアルスケールは見事なのにやっぱりアンプ専用という感じがしました。

<2007.01.26>


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