お粗末な自作5球スーパーでした。


 某オークションで時々出品されている自作品というラジオを入手されたそうで、これを修理して下さい。と訪ねてきたラジオですが これは自作品だから駄目だよ〜といっても直して〜〜みたいな感じで受け取ってはみたのですが・・・
 結論から申し上げれば、本来こういういったシャーシから組み立てられたラジオはパーツとして購入すべきでしょう。しかし、中には数パーセントの確率で数個のCRを交 換すれば作動するような立派な自作品もありますがまずお目にかかることはないと思います。
 しかし、ラジオキット用のシャーシに組み立てられた自作ラジオは、まだなんとか救いようがありますが、一風変わった自作ラジオは配置から見直す必要があり、修理ともなれば 新規で組み立てるよりコストが嵩むことを理解しておいて頂きたいと思います。
 このラジオは、この駄目ラジオの見本みたいなものでした。


◇ユニークなスタイルの自作品◇

真空管が見えるようにとアクリル板(ポリ板?)フロントパネルにして、
球の保護にパンチングパネルを天板に取り付けたと思います。


 一見お〜〜〜ですが、じつは天板の取り付け方法が普通にビス、ナットで固定してあり、真空管の交換、シャーシのホコリ掃除が 簡単にできない構造です。
 ここは容易に外せるプラリベットで固定する方がベターかと思います。また天板の横がカットされたままで怪我をする可能性があります。ここはカーショップに売られているような モールを挟み込んだ方が良いかと思います。
 あいにく手持ちはありませんし、新たに購入するにしても更にコストアップになりますので、後日必要とあらばご本人で手を加えて頂きたいと思います。


◇シャーシ裏側◇

初心者が見よう見まねで配線したような感じに見受けられます。


 スーパーOMさんが一目見るなり、配置を直さないと駄目だと・・・更に他のOMさんがスパゲティー配線だぁー!って・・・
 そうです。この配置だと初心者にはちょっとハードルが高いと思います。おまけにソケットの向きもおかしい、6SQ7回りの配線パーツもなんか怪しい・・・
 でも組み立てた本人は一生懸命だったんだろうなーと思います。これで辛うじて受信でもしてくれれば真空管ラジオに興味が湧くんだろうけど、残念ながら試験時にいきなりバチ ッ!
ってヒューズがとんでとんでとんで〜♪でした。
 これに懲りず再チャレンジして興味を持っていてくれれば嬉しいのですが・・・・


◇これは何??◇

真空管の袴に変な細工が・・・


この細工はシャシ裏を見ればあ〜あ!です。


 6SQ7-6SK7-6SA7の真空管は1番ピンを必ず接地して下さいって規格表やあちこちのサイトにも書かれている思うけど、これは初心者そのもの の証みたい。
 いや、こうしたってことは発振して困ってこうやったってことだから何かしら受信なり音が出たってことなんだろうか。
 それでも調子悪いのであれこれやってみたもののまともに働かず、諦めたってことなのかな?などと想像してしまう・・・。こうやってまじまじ眺めて想像するのも楽しみなのかな??


◇使われていたバリコンと交換したバリコン◇

電源トランスの取付穴も修正してシャーシーも叩きだして
あまり目立たないようにしました。


 使われていたANTコイルはバーアンテナタイプの210μHでしたから、バリコンはトリマー付きの430PFを使わなければいけませんが、バリコ ンは390PFのものでした。これだと数局は聞こえますがトンチンカンな受信範囲になってしまいます。
 恐らく上側と下側は発信周波数と合わずにポコンと発信が止まり受信しなくなると思います。仕方がないので貴重な最後の手持ちCosmos430PFをチョイス!
 ANTコイルは短なバーアンテナでしたので球ラジオにとてもよく似合うソレノイドコイル型に交換しました。勿論430PF用です。
 また、お気づきかとは思いますが、電源トランスの取付穴の部分が大きく歪んでいます。これは穴間隔が数ミリ狭くトランスがスコンと入らずに強引に押し込んだ為です。
 ラジオ作りは体力を使いますが、こういう余分な体力は使わないように、ピッタリ取付寸法に合わせて穴を開けましょう・・・


◇メーターとカウンターを付けて〜って?◇

言うのは簡単、付けるのは大変!


 メーターはOPTをバリコンの後部へ移動すれば収まりますが、カウンターは高価なブロックコンデンサーをポイして、内部にチューブラな
り小型のケミコンを組み込めばなんとか乗っかりますが、左側が賑やかでカウンター基板が丸見え、ブロックコンデンサーの大きな穴が出てしまう。あまりにもみっともないので付けた
 くないです。
 でも、人はそれぞれで、そういうごちゃごちゃした無骨なのが好みの方もいらっしゃると思います。しかし、個人的にはスカッとスッキリしていた方が好きです。
 なぜならば、スッキリしていた方が見飽きないからです。ということでカウンターはパス!外付けタイプを推薦しました。


◇部品の配置◇

GT管の場合は特にIFTの配置が好ましくないです。
もちろん回避の方法はいくらでもありますが・・・・

スーパーなのにアンテナ端子が2個・・何故?それに端子間隔がちょっと
広くてちょとみっともないかな。


 慣れている方はどうにでもしちゃいますが、スーパーを作る場合は配置するポイントをしっかり押さえてからシャーシー上に真空管とIFT、 コイル、バリコンを並べてIFTのPとG端子の配線が最短で信号がスムーズに流れる用に場所を決めます。この配線はB電源のリード線とクロスするのも避ける方が良いです。
 それでないとピーヒャラヒャララってなります。異常発振も起こしやすいしノイズも多くなります。
 シャーシーを新規にするのもコストアップだし、費用も嵩むのでこのままの配置で組み立てましたが、真空管の向きも変えて発振しないように配線しました。
 IFTはどうしようもないので、外国製のラジオがよく使っている方法で配線しました。


◇配 線 終 了◇

トラッキングもバッチリ!Sメータもどきもちゃんと動いて
535〜1605kHzまで普通に受信出来ます。

シャシ裏です。あまり綺麗じゃないけど、当初よりは良いと・・・聞こえるしー


 リード線はアンプに使っていた残り物ですが太くて大変でした。
 電源回路もちょっと手を加えて整流管が長持ちするように・・・ハムも少ないです。
 カウンターは周波数調整に用いただけで、乗せてあるだけす。これって意外と便利でちょっとした測定器?
 小型のケースに入れて使うと便利かもしれません。


◇天板が合わない!◇

何故こんなに隙間があるのでしょうか??


 配線が終わったので元に戻そうとしたら5mm程度の隙間が出来ています。シャーシが大きくなる訳けがありません。
 どうやらパンチングパネルのカットミスらしいです。取付時にぎゅ〜〜っと前後のフレームを押さえ込んでビス止めした様です。
 それでフレームが歪んでいた理由が分かりました。無理に付けると歪んでどこかに支障を来すのでやめましょう・・・
 パンチングパネルを大きく伸ばすことは不可能ですから、前後バランス良く隙間を設けて穴位置の修正で対処しました。
 これでフレームに無理な負荷がかかり曲がることはないと思います。


◇完  成◇

なんかスッキリしたような?球ラジオはボビンのコイルだと
レトロ感があってよく似合います。


◇後  部◇

SP端子追加、間隔が広すぎてみっともないアンテナ端子の穴は
カウンター出力端子とメーター調整VRに利用しました。


 リード線はアンプに使っていた残り物ですが太くて大変でした。
 電源回路もちょっと手を加えて整流管が長持ちするようにゴソゴソと、ハムも少ないです。
 残念なことにアクリル板も欠けていました。新たに交換すれば良いのですが、結構なお値段ですし、この程度ならちょっとした技術をお持ちの方からの依頼ですし
予算に合わせて簡単に交換できると思います。
 最後になりますが、自作品はあくまで部品取りとかシャーシ、ケースの再利用とした方が良いです。設計にあたってはパーツを揃えてからシャーシー上に並べて
全体のバランスを眺めて決めるとよいと思います。


◇最後に◇


 見た目に惑わされたのでしょうか。よく見れば解るラジオですが、大変お粗末というかとんでもない作品でした。
 私なら完全部品取りにするところです。今回はシャーシーの歪み矯正、ソケットの方向、部品の交換、補填等大変な作業になりました。
 そうそう・・AFだったかな?プレート負荷抵抗だったかな?何処か忘れてしまいましたがまったくトンチンカンな値が使われていました。
 こんな状態でしたから、新規より数倍疲れました・・・2度とやりたくないラジオでした。・・・おしまい。

<2020.10.02>


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